第4章 気の合う人
再来週なら、スケジュールは空けられそうだ。何か向こうで大きいイベントはあるだろうか。
先程メモした番号に電話をかける。が、出てもらえない。
「出ませんね……」
「仕方ない、向こうは夜の九時だぞ」
「あ、そうか……じゃあいつかければいいの?」
「夜家に帰ってからかければいいだろう」
「……国際電話って高いですよね」
「タダでアメリカ行けるんだぞ、ケチケチ言うな」
「……はい」
仕事を終えた帰り道、明日は休みだからどこかで食べて(飲んで)帰ろうと思ったけど、万が一酔っ払ったら電話かけるの忘れちゃいそうだし……久しぶりに自炊することにした。と言っても手の込んだ料理ではない。
野菜たっぷりの焼きうどんを作って食べて、ゆっくりお風呂に入り。
こちらが寝る前になってようやくアメリカは朝の仕事時間だ。自分のスマホから電話をかけると、そのジェイムズという男性が出て。こちらの意向を伝えた。
再来週は市民マラソン、大統領選の候補者の演説、有名シンガーのコンサート……大規模イベントはワシントンだけでも結構あるそうだ。
航空券を同封したエアメールを近々送ってもらえるから、あとは当日飛行機に乗りさえすれば、空港まで捜査官が迎えに来るし、移動もホテルも何も心配しなくていい、とのことだった。とっても有難い。
すごく優しい感じの喋り方をする人で(朝電話をくれた人はと大違い)、最後には「こちらで会えるのを楽しみにしているよ。日本はもう夜中かな?では、良い夜をね、おやすみ」なんて言われて、なんだか照れくさくなってしまった。
欧米の人って、キザな台詞スラスラ言うよね……
向こうに行ったらどんな人と一緒に仕事するんだろうか。零くん程ではないにしろ、このジェイムズって人となら、やりやすそう。でも日本語堪能な人って限られるだろうし、朝のアカイって人とだったら……正直嫌。アメリカ人の癖に(偏見か)女性にちっとも優しくなさそう。絶対的にやり辛い仕事になるだろう。
仕事相手を選べる立場になりたい……水野先生の言う通り、もっと経験を積んで、もっとデータを正確にして、もっと有名になれば、そんな日も望める……?のだろうか。
部屋の電気を消して、ベッドに入った。