第4章 気の合う人
「はい。東都大水野研究室です」
「さんか?警視庁の目暮という警部から話がいってると思うんだが、俺はアメリカ連邦捜査局のアカイだ」
「はい、私です。聞いてます」
「まず要件を言うが、君の力を借りたい。FBIにも協力してくれ」
電話口の人は、どうも上から目線の日本語を流暢に話す低い声の男性で、英語が喋れない私にとっては有難いけど、なんかやな感じの人……
話を聞いていけば、最近アメリカ、特にワシントン近郊でテロ事件が頻発しているらしい(たしかにニュースで見た覚えがある)。それらの規模はまだ小さいが、死者も出ている。
そこで私の能力を使えば、テロ行為を未然に防ぎ、しかも実行犯を捕えられるのではないか、と言うのだ。
テロリストに狙われやすい大人数が集まるイベントは土日に集中する。なので金曜日と土曜日の二日間かけて協力しろ、いつの金土でもいいが、なるべく早く来い、との事だった。
渡航費も宿泊費も二人分出してもらえるみたいだし、なんならしばらくアメリカに滞在して、週末の度に協力してくれ、とまで言われた。
でも先生の患者さんの診療だってあるし、滞在は金土を含む前後四日間だけ、という事でお願いした。
だからってすぐには行けない。会議や診療の予定が入ってる。それを調整してからまた連絡すると伝えると、電話口の彼は忙しい身らしく、自分のボスだという男に繋がる電話番号を教えられる。
番号と名前をメモする。
010-1-202-XXX-XXX
ジェイムズブラック
アカイの紹介の日本人能力者だと言えば分かるそうだ。電話口の男性同様、日本語も話せるらしい。
しかしまあ、苦手なタイプの人だった。
電話を切り、先生と顔を見合わせる。
「予定……どうでしたっけ……」
「だけでもこの機会にひと月くらい行ってきたらどうだ?経費は向こう持ちだろ?」
「それはそうですけど、無理です。なんかやな感じの人だったし、先生いないと英語分かりませんし」(水野先生は語学も堪能)
「には辛いと思うが、日本よりアメリカの方が殺人事件は圧倒的に多いぞ。データを正確にしていく為にも件数を積めるチャンスなんだがな」
「……尚更嫌です」
「でも、救える命の数も跳ね上がる訳だ」
「それはたしかに……でも今回は四日間だけでお願いします!」