第3章 忘れようと思っても
さっきの降谷さんとあの男性は一体何だったのだ。絶対いい雰囲気じゃなかった。
その人の顔をまじまじと見た訳じゃないけど、降谷さんに負けず劣らずのイケメンっぽかった……まあ、この場合顔の事は関係無いか。
でも男の人があそこに立ってるのを見た時は本当に……息が止まりそうだった。一瞬、本当に“あの彼”が帰ってきたのだと思ってしまった。
結局、全くの別人だったけど。
せっかくさっき“過去は過去”だ、と改めて決心した所だったのに。
また頭の中は“あの彼”のことでいっぱいになってしまった……
あの日“あの彼”と花壇の前で出会い、この部屋に上がってきて……
とりあえず彼の着ていた服を洗濯機に入れて回し、お風呂に入ってもらったはいいものの……彼がお風呂から上がってくる頃になって、背の高い男性でも着れる服ってウチには無いことに気付いた。
「……お風呂ありがとうございました」
「はい!でも、服洗っといて今更なんですけど……あなたの着れそうな服がウチになくって……」
「このままで大丈夫ですよ?」
「え、ええ……」
裸にタオル一枚で大丈夫だと言った彼、腹筋は見事に割れてるんだし、肩幅も広くて……温和な感じの彼からは想像もしてなかった立派な体格に……異常な位ドキドキしてきてしまって、私が大丈夫じゃない。目のやり場に困った私は後ろを向いた。
「どうかされましたか?」
「……どうもしません!私もお風呂入ってくるんで適当に寛いでてください!」
逃げるように浴室へ駆け込んだ。
私は彼に……生物学的に言えば、発情しているのかもしれない。どうかしてしまったのか。
それならそもそも、よく知りもしない男性を家に上げた時点でどうかしてたのかもしれないけど。
なんでこんなに胸が高鳴るんだろうか……それに、身体が火照って熱い。
お風呂を済ませて部屋に戻ると、彼はベッドに横たわっていて。薄い布団を被ってるから、さっきよりはだいぶ見ていられる格好……
「すみません、勝手にベッドお借りしていました」
「いいんです!あの!どうぞ、そのままで……」
彼がベッドから起き上がろうとして、また上半身が露になりかけたもんだから、慌ててそれを制した。
布団から出ているのは隆々とした腕と、肩から上だけ。それでも彼の周りに漂う色気の量がすごすぎて直視できない。