第14章 二人の選んだ道
情事後、零くんとベッドに並んで寝転がったまましばらく。
向かい合ってお互いの身体になんとなく触れながら、ぽつ、ぽつ、とようやくまともな言葉を交わし始める。
「零くん髪型変わったね、ココがない」
「ああ。ちょっと悪い男っぽいだろ?」
「悪いかは分かんないけど……たしかにこっちのが男っぽいかな」
「はそんなに変わってないよな、髪は伸びたけど」
「そうなの!なんか最初の頃は美容院行くのちょっと億劫でさ、言葉ちゃんと通じないしアメリカって長さの単位も違うし」
「なるほどな」
「で、勝手に伸びて、傷んでるとこだけ切ってもらってーって感じで……」
「なんだ、式のこと考えてるのかと思ったけど」
「式っ?ああ……長い方が色々できるもんね……」
式って結婚式のことか。それしかない、よな。
「、いつ頃日本に帰ってくる?」
「……うーん、自分次第っていうか……私はFBIの局員でもないからね、帰りたかったらいつでも帰れると思う……勝手だけど」
「なら、ぼちぼち帰って来いよ。これからはたまに会えると思うし。こっちも出来るだけ早く終わらせる」
「そうだね……」
話は式のことになり、いよいよ“結婚”の話が現実味を帯びてきた。ただ私達の場合、親がいない上に、祝福してくれる人間もごく僅か、その点で“普通の結婚式”とは違うかもしれないけど。
「水野先生と程じゃないけど、僕にも父親みたいな上司が一人いるんだ」
「へえ、初めて聞くかも」
「若い頃からずっと世話になってて……僕よりも僕の結婚を望んでた人だ。との事もずっと応援してくれてた。その人だけは呼びたいかな」
「私の場合は呼ばなくても水野先生だけは絶対来るな……」
式は四人で小さく挙げて、旅行はヨーロッパがいいかな、とか、そんな話をしてるとなんか夢でも見てるみたいだ。久しぶりに零くんと会えただけでも夢とまでは言わないけど、ちょっと非日常な気分なのに。
いつまでもこんなふわふわした時間が続けばいいのに。
だけどまた話題が仕事のことになるとそんな甘い雰囲気もブチ壊れる。
そりゃあ、日々遺体を探して歩く私と、犯罪グループに潜入中の零くんだ、仕方ないのか……
久しぶりの二人の夜は、信じられないくらいあっという間に更けていった。