第13章 決断のその先
ホテルから出て、スマホを確認すると時刻は夜の始め。零くんの仕事もそろそろ終わる頃だろうか。
家までは結構あるけど歩いても帰れる距離だ。タクシーに乗るにしても、帰宅ラッシュと重なって思った程速くは着かなさそうだし……
歩いて帰ることにする。スマホを鞄にしまって、背筋をしっかり伸ばして歩く。
秀一さんと話を終えて、ラウンジを出るとき、気を張ってないと泣きそうだった。今だって、泣けと言われたら数秒で泣けそう。未だに心臓は大きな音を立て続けてるし、時たま痛みを訴えてくる位だ。
彼がもっと早く正体を明かしてくれればよかったのにって……何度も思った。
でももしそうだったとしても……その先に私が零くんと出会って何の感情も持たない保証はどこにもない。
どっちが早いかの問題だったのか?
どちらにせよぶち当たることになったのか?
一度考え出すとこのスパイラルから中々抜け出せなくなる。
だけどもう決めた、これでいい。と自分に言い聞かせて、そのスパイラルを無理矢理終わらせる。
沢山の人が行き交う歩道……通り沿いのデパートのショーウィンドウを目の端に入れつつ歩いていると、鞄の中のスマホが鳴り出した。
歩きながら取り出すと、“降谷さん”から着信の表示。
正直なところ、今零くんと楽しく喋れる気分ではないんだけど……出ない訳にもいかない。
「もしもし?零くん仕事終わっ」
「っ、今どこにいる!」
「えっ……□□通りの、〇〇デパートの前らへん?」
「会って話したい、迎えに行くから待ってろ!」
「ちょっと?零く……」
急にブツっと通話は切れて、プー、プー……と虚しく機械音が響く。
零くんらしくない。何かあったのか。
それよりも今の私は零くんと普通に会って笑えるだろうか。
その場に立ち止まり、車道側を向く。彼は車で来るんだろうし、迎えに来てくれるんならそっちに居た方がいいか……
歩道の端に立ち、タクシーが横に停まろうとしてくるのを何度か目線でやり過ごし、数分。独特のエンジン音が聞こえた気がして。車が列になってる車道を目で探せば、零くんの車が見えた。そっちに向かって歩道を歩いて、彼の車もだんだん近くなり……助手席に乗り込む。
「どしたの?急に」
「、今日、何してた?」
「何って……」
……いきなりどういう事だ。