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恋のはじめかた【名探偵コナンR18】

第12章 密会は堂々と行われる


「私はまたこうして秀一さんに会えたこと、すごく嬉しかったんです。ずっとあの時の事、忘れられなかったし……」

「俺も同じだ」

「でも……実は私、今、付き合ってる人がいるんです。秀一さんと色んなことしておいて……本当最低なんですけど」

「ほう……」

「秀一さんが嫌とかじゃないんです。でもやっぱり大事な人を裏切るようなことはしたくなくて……だからもう、こういう風に会うのは、これで最後にしたいんです」


なんとか言いたかったことは、言えた。

だけど全然スッキリしない。心の中にはモヤモヤしたものが渦巻いているままだし、酷く息苦しい。


秀一さんは何かを考えるように上の方を見ながら黙っていて……暫くしてやっと視線がこちらを向いた。


「……言いたい事はそれだけか」

「はい」


聞こえたかも分からない位小さな声で返事をして、ゆっくり頷いた。


「アメリカでの仕事の話はどうする」

「それはまだ……でももしするとなったら、秀一さんと動くことになるんです、よね」

「俺もいい大人だ、その辺の分別はある。仕事に私情は持ち込まん」

「はい……」

「まあ、事情は分かった。了承する」


少しだけ、モヤが晴れてきた……かもしれない。彼の表情からも怖さが消えたように見えるからか。

コーヒーをひと口啜って、椅子に深く座り直した。


「ひとつプライベートな事を聞くが、の恋人は降谷くんではないのか?」

「っ!?どうして、ですか?」


腰が浮きそうになる程ビックリした。どうして……


「全く……嫌な予感は当たるもんだな」

「……まだ私否定も肯定してません」

「顔に出ている」


今まで秀一さんの前で零くんの話なんてした覚えはない。一緒に居る所を見られたのも、自宅の前で会った時だけ。でもあの時はまだ、私と零くんはそういう間柄じゃなかったし。


「まあいい……これからも仕事のパートナーとして宜しく頼む」

「……は、はい」


出された片手を取って、力強く握手を交わす。

これでいい。

どうして私の恋人を零くんだと思ったのかは聞けなかったけど……

コーヒーを飲み干し、その場で別れた。

ホテルを出る直前、トイレに入り、ずっと手帳に挟んだままだった“あの彼”の置き手紙をゴミ箱に捨てた。
家に帰ったらあの部屋着も捨てよう。

これで、よかった。
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