第10章 気分は上々……
「飛行機は寝れたか?」
「うーん、ぼちぼち?」
「そうか。いや、まだ昼過ぎだろ?急いで家に帰らなくてもいいのかもな、って」
「たしかに」
「どっか寄ってくか?」
「そうだね。じゃあ……零くんの部屋着でも買いに行く?ウチにもあった方がいいでしょ?」
「それは……今夜はウチに泊まらないかって誘われてると思えばいいのか?」
「……そんなつもりじゃ、ない……ないけど……」
「分かった。買いに行こう」
楽しそうに口角を上げた零くんが運転中でよかった。だって今の私、絶対顔赤い……
通り道にあった大型の衣料品店で零くんの部屋着と、「ついでに……」って私が今度零くんの家に行った時に着る服まで選ぶことになる。
「コレはどうだ?似合うと思う」
そう言った零くんが手にしてるのは、裾や袖がフリっとしたワンピースタイプの部屋着だった。可愛いけど……
「……私こんな可愛いの着て寝たことないなぁ」
「そうか?でも普通のパジャマも捨て難いよな。ホテルのやつ着てるも可愛かったし」
「……じゃあコレにする」
私が手に取ったのは、シンプルなシャツワンピースタイプのパジャマだ。
「それも合いそうだな。触り心地も良さそうだ」
「うん、着やすそう」
「脱がせやすさも問題ない」
「え……っ?ああ……」
零くんがそんな事考えてたなんて思いもよらず……顔を上げれなくて、斜め下、手にした布に視線を落とす。
「どっちも買おうか。別に二つあったっていいよな」
「そ、そだね……」
涼しい顔して零くんは言うけど……私の頭の中は軽く目眩を起こしそうな程ドギマギしている。
どうしたらいいのやら、再び斜め下を見つめていると「外でそんな可愛い顔するなよ、誰にも見せたくない」とか……そんなことを耳元でボソッと言われて、益々どんな顔をしたらいいのか分からなくなってしまった。
結局部屋着を計三つ買って、再び車に戻る。
「このままとデートもいいけど……一旦帰ろうか」
「うーん、そうだね。荷物も片付けたいし」
それに零くんの手前言い難いけど、実はお風呂に物凄く入りたい。アメリカのホテルで朝シャワーを浴びたのはもう何時間前だろう……