第9章 善意の横槍
翌朝。時間ピッタリにホテルの一階に降りチェックアウトを済ませると、ジェイムズさんがお迎えに来てくれていた。
「おはよう。さん、水野教授。今回は協力本当に有難う」
「ジェイムズさん!おはようございます!」
「体調はどうだい?」
「もう大丈夫です!ご心配お掛けしました……あの、犯人捕まえられそうですか……?」
「おそらく。君達が飛行機に乗る頃にはね」
穏やかに頷くジェイムズさんを見て安心する。
ホテルの外に出て、道路に停まっていた高級セダンの後部座席のドアを開けられ、乗り込んだ。
「赤井さんが来てないってことは、捜査に行ってるってことですよね?」
「そうだ。彼からも礼を言っておいてくれと言われているよ。それから、これをさんに、と預かってきている」
「わー!もしかして!」
一昨日の晩に言ってた、ドーナツ屋のドーナツとコーヒーだった。まだ温かいカップと、小さな箱を受け取る。
「空港まではしばらくかかる。食べながら寛いでくれ」
「ありがとうございますー!頂きます!」
走り出した車の中、箱を開けばシンプルなドーナツと、カラフルなのが一つずつ並んでいて。
先生を見ると「俺はいい」って首を横に振ったから、どっちも私が頂こう。
その前にコーヒーをひとくち口に含んで確認すると……今日はブラックだった。そう、私は甘い物を食べる時はブラックじゃないと嫌なのだ。
「やっぱ赤井さんってデキる男ですねー……」
「そうだが。惚れるなよ?には、」
「分かってますよ、いただきまーす」
(おそらく)出来たてのドーナツをたまに頬張りながら、上機嫌で街並みを眺めていたらあっという間に空港に着き、入口の所でジェイムズさんとはお別れとなる。
「ジェイムズさん、最後の最後まで色々配慮してくださってありがとうございました。おかげで気持ちよく仕事できました」
「おや。そう言って貰えるとこちらも嬉しいよ」
「赤井さんにも、ありがとうございましたって、お伝えください」
「ああ。では、元気でね。これからの君の活躍に期待しているよ」
「はい!」