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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第7章 ※ネクラ男子の本性 独歩


「さん」


名前を呼ばれて振り向くと、そこには同じクラスの観音坂くんが立っていた。


「ん?何?」
「あ、いや…今日、委員会があるんだけど…」
「……あ!ほんとだ!朝先生が言ってたんだっけ?ごめんごめん忘れてたや」


一緒に歩いていた友達に一言告げ、慌てて観音坂くんに走り寄る。


「…いい匂い」
「え、そう?」
「うぇっ?あ、ごめん…声に出てたか?」
「うん」
「ごめんな、気持ち悪いよな俺なんかにこんなこと言われて。変な下心があったとかそういうわけじゃなくて…」
「ストップストップ!きもち悪いなんて言ってないんだし、別に謝らなくていいよ」
「ご…あ、いや、わ、分かった」


 またも謝ろうとした観音坂くんはギリギリでその言葉を飲み込み、コクンと頷く。猫背気味の背中がさらに丸まったような気がした。委員会が終わったあとも一緒に駅まで帰ったのだが、終始観音坂くんと目が合うことはなかった、
 クラスでもあまり目立たない彼は、ひっそりと端っこの方で本を読んでいたり勉強したりしているタイプだ。友達と喋っているところもあまり見たことがない。唯一、幼馴染だという伊弉冊くんが「独歩ちん!」とクラスに来ることくらいだろうか。




「……ふぁあ」
「寝不足?」
「んー…」


 重たい瞼を擦りながらまた大きな欠伸をする。眠たい、眠すぎる。まだ1時間目が終わったばかりだというのに。

「次自習だし保健室で寝てくれば?その次の授業だって坂モンだし私代わりに返事しといたげよっか」
「え?神では?」
「お礼はスタバで勘弁してやんよ」
「見返り求めるんかーい。でも助かる…午後は数学だし寝てらんないもんね」


お言葉に甘えて行ってくる、と立ち上がり、見送ってくれる友人にひらひらと手を振って教室を出た。保健室のドアを開けると、先生に「どうしたの?」と尋ねられる。


「ちょっと寝不足で…2時間くらい寝ててもいいですか?」
「あらあら。今は幸い体調不良の子もいないし、好きなベッドで寝ていいわよ」
「ありがとうございます〜」


よかったら食べて、と飴まで手渡され、相変わらず優しいなぁ…とベッドに潜り込んだ。やっぱり机でウトウトするのとはまた違う気持ちよさがあって、すでに限界だった瞼が本格的に閉じようとする。そして気が付いたときには、私はすっかり寝落ちてしまっていた。
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