【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集
第3章 ※心と身体の距離 帝統
「ん…っ、あっ、あぁっ」
「うっ……あ、出るっ…くっ」
ばちゅんっ、と奥まで貫かれ、ビクビクッと体が震える。帝統もぐりぐりと最後まで押し付け、苦しそうに息を吐いて中からソレを抜いた。
ゴムを縛ってゴミ箱に放り投げると、あー疲れた!と私の横に寝転がった。そして、すぐにぐーぐーといびきをかいて、寝こけてしまう。私はそんな帝統の姿を見て、心の中でため息をついた。ゆっくりとベッドから降りて、ベタベタと気持ち悪い体を洗い流すためにお風呂へと向かう。
いつからだろう。セックスの後に、帝統と会話をすることがなくなったのは。
いつからだろう。『ん、気持ちよかった。ありがとな』とキスをしてくれなくなったのは。
ザーーーッ
勢いよく飛び出すお湯を頭からかぶり、私はゴシゴシと顔を洗った。
最初の頃は。
最初の頃は、ちゃんと付き合っていたと言える関係だった。帝統に好きだと言われ、私も好きだと伝えた。はっきりとした言葉の制約はなけれど、帝統が私のためにギャンブルを控えてくれていたのは分かっていたし、記念日には必ず私の好きなケーキを買ってきてくれた。
「……あれ最後に一緒に食べたの、いつだったっけ」
もう思い出せないほど、遠い過去の話だ。あんなに大好きだった甘いクリームの味もすっかり忘れてしまった。
今では帝統が家に帰ってくるのは、寝るか、ご飯を食べるか、セックスするかのときだけ。あとはほとんどパチンコかどこかにギャンブルをしに行っている。
初めから、帝統は都合のいい女を探していただけなのかもしれない。そのことに気付いたときは毎晩悩んでは泣いていたものだが、今ではすっかり受け入れている自分がいる。
「好きじゃ、ないのかなぁ…」
ぽつり、とずっと胸中に抱えていた思いが溢れる。この関係に疑問を持ちながらもずるずると続けてしまっているのは、帝統のことが好きだからなのか、私自身が全てを諦めてしまったからなのか。いくら考えても答えが出てきそうにない。
出口のない迷路を永遠に彷徨っているような感覚だ。
はぁ…と今度は浴室に響くくらい大きなため息をついて、シャワーを止め、浴槽に浸かった。