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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第1章 ※最初から兄妹じゃない 一郎


息を整え終えないうちに一兄に唇を塞がれ、酸素を取り入れようと口を開けばさらに深く舌を絡め取られ、舐られる。私の忙しない息遣いと、くちくちと唾液が混ざり合う音が部屋に響く。ちゅう、と舌を吸ってから離れた一兄をぼやけた視界で捉えながら、大きく酸素を取り込んだ。


「大好きだ。今までも…これからも、ずっと」


そう笑って私の頬に手を添える一兄を最後に、私は意識を手放した。





あれから数日、一兄はいつも通りだった。夢なんじゃないかとさえ思ったが、鏡を見るたび目に入る紅い跡が、夢ではないことを物語っている。私はどうしても前みたいに一兄の瞳を見る事ができなくて、なるべく関わることを避けた。


なのに、ベッドに入るたびあの日のことを思い出してしまう。一兄にどのように触られ、自分がどんなふうに乱れたのか。少し自分で弄ってみたりもした。でもやっぱり、気持ち良くはなれなくて。


兄に犯されたという喪失感と、快楽を求めて火照る身体との間で何度も葛藤し、数日が経過した。





「…あれ、2人は?」
「二郎は友達と出かけて、三郎は図書館に行ったぞ」
「そう、なんだ…」


日曜日。


朝起きると2人は居なくて、一兄がソファで寝そべって本を読んでいた。若干の気まずさを感じつつも、冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ。ごくごく、とその場で一気に飲み干した。


「あ、俺にもコーラ取ってくんねぇか?ペットボトルのやつ」
「分かった」


再び冷蔵庫を開けると、一兄の言う通り500mlサイズのコーラが置かれてある。それを手に取り、いつの間にか座り直した一兄に差し出した。


すると、一兄はペットボトルではなく私の腕を取りぐいっと自身に引き寄せる。突然の行動に踏ん張ることも出来ず、そのまま一兄の胸の中に飛び込んだ。


「わっ!……い、一兄…?」
「」


あの日と同じ、熱を孕んだ声で名前を呼ばれ、ビクッと肩が跳ねる。顎に手を添え上を向かされたと思えば、ちゅっと触れるだけのキスをされた。


「…続き、したいか?」


前のように強制ではなく、私に尋ねる辺り一兄は分かっているんだと思う。


私が、熱を燻らせていることを。


頷いちゃいけないって頭では分かってるのに、気が付けば、私はこくり、と小さく首を縦に振っていた。



fin.
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