【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第29章 昔日
「エルヴィン、その子はまだ年齢が基準を満たしていないんだろう?なんたってそんなに急ぐのさ」
「ハンジ分隊長のおっしゃる通りです。俺も一度見かけましたが……まだ年齢の平均体格にも満たない小柄な少女じゃないですか。あんな少女に特例を認めては、他の兵士たちに示しがつきません」
「第一、そんな少女を、……こんなことを言うのはなんですが、もっとも生存確率が低い調査兵団に入れるのは、あまりに酷ではないですか?」
アリスと初めて会ったとき、私は全身が震えた。その死んだような瞳から伝わる感情は、殺意。それ一色であった。
「既に了承は得ている。これは当の本人の希望でもあるからな。一刻も早く調査兵団に入りたいと。去年も同じような申請が来ていた」
その感覚は、リヴァイと初めて出会ったときの感覚に似ていた。必ずや、変革の翼になりうる人材だと、私は踏んだ。
「なんと、」
「へぇー、面白い子だね〜」
会議でその話題を出したとき、最初はあまり良くない反応だった。
もちろん、"彼"も。
「俺は反対だな」
「……リヴァイ」
隣でずっと黙っていたリヴァイが唐突に口を開いた。
「調査兵団は託児所じゃねぇ、たとえ一匹だろうがガキを養う余裕はねぇだろ」
「確かに子供だが実力は折り紙つき、特例に十分見合うものだ。今から実践経験を積ませれば十二分に強力な兵士に育つ」
「そのガキ一匹を育てるために、一体何人を犠牲にするつもりだ?足手まといは御免だ、あと1年くらい待ちゃあいいだろ」
グダグダと言い合っていると、一番端の席から声がかかる。
「あの……発言よろしいでしょうか?」
私が目で了承を合図をすると、手を挙げた男は小さく笑い、立ち上がった。