第10章 鬼と花
「アルさんは先程、愈史郎と私の三人でこれからのことについて話し合い、私たちと暮らしていくことにしましたが...」
愈史郎さんの嫌そうな顔が目に浮かぶ
珠世さんを好いてらっしゃるのなら
"珠世様の広いお心に感激です"
とか言って難なく過ごしていけそうな気もする
「そのグラスを貸してください」
手渡したグラスは持ってきてと頼まれたもの
小さめの小瓶のようなもので
中には少しこびりついたような何かが残っている
「これは椿さんの血を入れていた小瓶です」
「...何がいいたいんですか...
あの子が鬼だって言いたいんですか...?」
「先程頂いた椿さんの血に人の皮膚を入れると
血に触れた瞬間、その皮は消えてしまいました
おそらく、通常の鬼とは違った形で鬼化しているんだと思います」
「椿とあったのは半年ほど前です...
十二鬼月がいた山で一人泣いてたんです
鬼に怯え、親に捨てられ
あの子もいつか
太陽の下にいられなくなるのですか...」
「鬼を人に戻す薬を開発していますが
椿さんの血はどれにも反応しません
鬼としての血にはあまりにも薄すぎますが
人の血とは...」
「傷だらけだったんです...
痣も沢山あったし
鬼の血が入ったのかなぁ
私はまた
間に合わなかった...っ!!」
珠世さんの腕が優しく包んでくれた
泣きたいはずなのに
涙がでない