第1章 序章
――放課後
浮足立つのを隠し切れず、クロに突っ込まれた
「どーしたお前」と、少し引いていた
いつもは大嫌いなアップも、今日は頑張れて、そしたら夜久さんにも驚かれた
いつもの練習風景、それがこの後一変する
練習の終わりがけに、さんが顔を出したから
まず初めに虎が気付いた
固まって、顔面レシーブをした
それで他のチームメイトも虎の視線の方向を確認して気付く
おれも、その流れで外へ顔を向けるとさんと目が合って、瞬間、彼女の表情がぱっと咲いて
控え目に手を振ってくれた
その一連の彼女の行動に驚愕したのは、おれだけじゃなかった
「けェんまクーン…?」
クロが引きつり顔でこちらを見る
リエーフはバカだから、自分に手を振ったと勘違いして腕を振っている
夜久さんは「まじか」と
犬岡は「わああああ…!」と
虎に至っては、今まで向けられたことのない程の殺気を放ってくる
「いつの間に研磨が女子と…しかもあの子ってさァ」
えええ、と信じられないものを見たとクロはおれとさんを交互に見遣る
「想像してるような大層なものじゃないよ、まだ。二回しか話したことないし」
そう言いながら、彼女へこっそり手をかざす
ぼん、と効果音が出そうな勢いで顔を染め、それを隠すように俯き加減で二階の応援席へゆく
「まじか…っ!!!」
「クロうるさい」
おれだって初めてだよこんなの
勘違いしない様にって精一杯なの
「……はああぁ………」
「なんでため息なんだよ」