第15章 恋スル乙女【竈門炭治郎】
散々汗をかいた私達は、そのままお風呂場へと直行し…二度目の入浴をしていた。
「…紗英さん、そういえばさ…禰豆子を抱いてる時、なんで悲しい匂いさせてたの?」
……すっかり忘れていた。
本当に「そういえば」そうだった…。
『……お母さん、みたいって。』
なんだか今更恥ずかしく…ボソボソと話してしまう。
「ん?」
『…禰豆子を抱き上げた時、お母さんみたいって言ったでしょ?…これが…カナヲだったら、姉妹みたいに見えるんだろうなって…ちょっと、悄気てただけよ…。』
自分で説明して、恥ずかしくなり頬を押さえた。
ほら、なんか…炭治郎くん、ポカーン?としてるし!
「……ははっ!!なんだ、そうだったのか!紗英さんを悲しませてたから禰豆子も怒ってたんだな!」
あはは!!と大きな声で笑い飛ばす。
ひとしきり笑った後、炭治郎くんは私の背後へと回り後ろからギュッと抱き締められた。
『も…、笑わないでよ…。…あの時、禰豆子は小さな姿だったし…そりゃあ私が抱けば親子に見えるな…って、冷静に考えたらわかること……っ…!!?』
顎を取り、口付けられる。
『…っ、う…んん…ッ』
「っ、…子どもが居たら、こんな感じかな?って思ったんだ。」
顎に添えた手を頬に滑らせ、優しく両手で包み込まれる。
「禰豆子を抱き上げてる姿を見てさ…、紗英さんと俺の子がいたら…こんな感じなのかなって思ってたんだ。」
屈託なく、炭治郎くんが微笑む。
不思議…この間まで、全く想像出来なかった未来が…炭治郎くんとなら、どんな未来でも描くことが出来るなんて。
『…女の子だったら…可愛くて…、お嫁にやれないわね。』
「うん!やらないな!」
一切悪気なく笑いながら言い切る様に、笑みが溢れる。
『…炭治郎くん。』
「なんですか?」
『大好きよ…』
そう言って頬に口付け、2人で目を合わせ笑い合う。
なんてことはない…穏やかな夜。
まだ見ぬ未来を、この先も…この人と。