第1章 思春期
カラカラカラ…
「いらっしゃい!あら、大ちゃん!」
「こんばんは~」
たまに来る居酒屋。家庭料理って感じで飯がウマイの。あと俺、女将さん好きなんだよね。肝っ玉母ちゃんみたいで。
「おまかせで」
「はいよっ」
都内のちょっと外れたとこにあるお店。基本一人で飲みたい時に来る。ま、俺の…隠れ家?間違ってもマツジュンとは出会わないお店(笑)。ホントにフツーの、こじんまりした居酒屋さんなんだけど、何か好きで。この雰囲気が。
それと…
ガラガラー…
「ただいまぁー…」
あ、来た来た。帰ってきた。
「おかえりミキ。手ぇ洗って着替えたら手伝って」
「へ~い…」
ミキ。女将さんの娘。学校にしちゃ時間が遅い。部活かな?
「返事はハイ!ほら、お客さんにもご挨拶」
「ハイハイ。いらっしゃ~…」
「おかえり~♪」
「…」
俺の顔見るなり、ミキ、いきなりダッシュして。二階に上がってっちゃった…。あ、二階は自宅ね。
ていうか
何?今の。
「まーっ。何だろあの子は。挨拶もしないでっ」
「…何か急いでたんじゃない?」
うん。いつもはもっと絡んでくる。なつこくてね。可愛いのよ。それも何気に店に来る楽しみだったりしたんだけど…。
何だ。思春期?