第59章 必然(玄奘三蔵)
眩しい光に目を開ける。随分懐かしい夢を見たな、と思って。上半身をベッドから起こせば、隣で丸まって寝る頼華の姿。やや下に落ちている布団を彼女にかけ直して俺は煙草に火をつけた。
「ん……さん、ぞ…」
三蔵、と言うことは夢でも見てるのかと思い、彼女の頭に手をやる。
「…どこにも、行かないから…そばにいて…」
「…あぁ、何処にも行かねぇ。ずっとそばにいてやるから。」
そう夢を見続ける彼女の頭に口付けを落とした。
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昔の三蔵を、久しぶりに思い出して。女の子のような、綺麗な顔立ち。成長する事に、整った顔つきの男の人になって。
妹としてしか、私を見てないことは分かっていたけれど、私には兄として三蔵を見ることは出来なかったから。
小さい頃に芽生えた感情は、留まることを知らなくて。成長する事に大きくなる感情に、抑えきれなくなっていた。
そんな時に、父様が目の前で
暗闇に落ちるはずの私が、今こうして生きているのは三蔵が、救ってくれたから。
傷まみれの、血みどろになった私を、彼は綺麗に洗ってくれて、守ってくれた。
ふわりと香ってくる、だいすきな匂い。
「…げんじょ、」
「…起きたか」
「おはよ、玄奘」
「…あぁ」
煙草を吸いながらこちらを見下ろしてくる、綺麗な紫の瞳。
「…だいすき」
「急になんだ」
「…なんか今、言いたくて」
「…そうか」
撫でてくる彼の大きい掌が心地いい。
この世の中に、運命の人、とかそんなもの居ないってわかってる。
偶然。なんてこともない。
これはたったひとつの、わたしの
必然
__それ以外にはありえない
たとえ生まれ変わっても、私は必ず彼を好きになる
end
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悟空との出会いを少し交えてみました。
寝起き煙草はうまい。笑