第6章 その罪ごと(跡部景吾)
「っ……あたしも、」
「あぁ、」
「…跡部くんが、好き」
それを聞いた、跡部の彼女を抱きしめる腕が更に強くなる。
こんなにも小さいこいつは、どれだけの苦痛を今まで感じてきたのだろうと跡部は思った。
「…なぁ、龍ヶ崎」
「…?」
「…これからは俺様と共に生きろ」
その言葉に彼女は小さく頷いた。
例え生まれた世界が違っても
例え周りが敵になろうとも
その罪ごと君を愛そう
──それが俺に出来る唯一の事だから
(俺が何からも守ってやるから)
(お前はただ笑っていればいい)
end
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*おまけ*
その日から頼華は跡部専属のマネージャーになった。
というか跡部が勝手にそうしたのだが。
正レギュラー──とくに忍足や向日は何か言っていたが、跡部が聞く耳を持つはずなく。マネージャーとしての頼華は大変に優秀だったから。
「くそくそ!滝は何も思わねーのかよ!」
「俺?俺はいいと思うけどね」
ふふ、と笑う滝を横目に忍足はハァ、と溜息をつく。
「漸くくっ付いた思たら今度は独占かいな」
「うるせぇ。俺がルールだ。」
アーン?と睨みを利かす跡部にはいはい、と忍足は諦めモードだ。それを聞いた他のマネージャー達も笑っている。
跡部といえば頼華を自分専属のマネージャーにする、そう皆に宣言してから、横に座る彼女の腰に手を回したままテニスコートのベンチに踏ん反り返っている。
「…これじゃあ仕事できないよ、跡部くん」
「アーン?お前は俺様専属なんだから俺様の言う通りにすればいい」
マネージャーの仕事したいんだけど…と思う頼華を見つめ、彼女の頭を撫でる跡部の眼差しはそれはそれは優しいものだった。
「…俺達もいるんだけどよぉ」
「今の跡部さんに何言ってもダメですよ宍戸さん」
「…そんなんじゃ俺がすぐに下剋上できますね」
「俺も頼華ちゃんの専属になりたいC〜」
わーわーと口々にする部員を他所に、跡部はただただ頼華をみつめていた。
そんな2人を見守る滝と樺地の表情がとても優しいものだとは誰も知らない。
ほんとにend