第11章 解放の時間
「和さん・・・今までありがと。
私のところに我が儘に付き合ってくれて。
振り回してごめんね」
精一杯の一言と、精一杯の声だった。
今にも泣きそうで
唇噛み締めて外を向いた。
でも、和さんの優しい声で
その行為は無意味になって
涙が垂れた。
「こういうこと、言う柄じゃないんだけど」
「私は、楽しかったですよ?
我が儘なんて、受け止めたことなかった。
ぶっちゃけ、私も色々忘れられて
貴女には感謝しているんです。
じゃないと、来ないから、今日とか。
たまたまロケでこの近く寄って顔出した。
そんなこと、普通しないからね」
まだ、外を向いたままの私の
背中に、和さんの言葉が染み込んでいく。
はぁ、と一つ深いため息ついてから
「仕方ない人ですね。病人ってそんななの?」
呆れられた。
それから強引に和さんの
方に体が向けられて
なにかと考える暇もなく
私の唇に触れたのは、和さんの唇
それを認識するのが遅い人間が
目を閉じられるはずもなく