第11章 解放の時間
「和さん」
「はいはい」
「和さーん」
「わかったから」
名前をもう一度呼ぶと
入り口に立っていたその人は
早足で私のところに来てくれる。
ベッドに腰かけた和さん。
和さんだ。
「和さん」
「だから、なに?さっきから」
「私、わたしね」
はいはい、とクスクス笑われた。
言わなくちゃ
和さんに言わなくちゃ
好きなんだもん
前の人に振り回されて
あの人は結婚してるんだ。
和さんが好きなんだもん。
「和さん」
「はあい」
「私ね」
「うん」
「和さんが・・・好き、です」
「え?」
「えって」
「最後の方が聞こえないんだけど」
「わざとだな」
「違うって」
「うそだぁ~」
一度起きた笑い声から
私ははっとして沈黙を作った。