第4章 沈む夕日
「話し相手なってくれる?」
これまた驚きの発言だ。
それでも私は迷いを持たなかった。
「うん」
その二文字以外には
なにも思い付かなかった。
「そっちは?」
壁によしかかった二宮和也。
人通りが少ないからか
話し声の一つひとつが
廊下に響いていた。
「似たようなこと」
「また私に会いたいって?」
にやけながらも
軽く人を見下すところは
唯一わかりあえないところだろうな。
「そうね。二宮和也に、また会いたいかな」
「フルネーム長くないですか」
「思った」
「呼び名どうしましょうかね~」
よくよく考えたら
なんだかくだらないけど
お互いこんなくだらない時間を
持ててなかったから
何も違和感持たなかった。
「一応貴女の方が年下よね」
「若いと言ってください」
「はいはい」
それからしばらく考えて
出た決断も似ていたね。
「さん」
そう言ってくれた言葉と
「和さん」
そう言った言葉とが
重なったのは
日がすっかり沈んだ時間。
シンデレラで言う
12時の鐘が鳴ったのだ。