第17章 思うに別れて(happybirthday)【冨岡 義勇】
悲鳴嶼行冥 32歳 公民教師だ 幼子の頃から記憶はあった 前世では盲目になり視覚以外の感覚が鋭くなっていたが 今の私は目は見えているから五感はおそらく人並みだと思う 就職面接で御館様だと声の記憶で分かった 鮮明に思い出された記憶と 初めて見る御館様のご尊顔に相変わらず涙もろい私はハラハラと涙を流し面接どころではなくなってしまった 目の前で微笑む御館様は私の大きな手を握りしめ
「行冥…ありがとう また宜しくたのむね」
「もったいないお言葉です」
そう言われ面接らしい事はなにひとつもなく私の採用は決まった
「俺 19ですよ」
「そうか…14歳で命を散らした時透も あと1年したら一緒に酒を飲める歳になるのだな」
隣に座りハラハラと涙を流す私に「もう…」と笑いながら胡蝶姉がほのかに石鹸の香りがする自分のハンカチで涙を拭いてくれた
あの口下手な冨岡にそんな想い人がいたとは気付かなかった 竈門禰豆子と同じで人を1度も喰った事がない 無惨からの支配もされていない
違う所は赤子から成長をした 始めから太陽を克服していた 生きる為の栄養は人間と同じ 傷などの修復力も人間と同じ ただ血を欲しがる そして血取り入れると鬼と同じ修復力になる 人間と鬼のハイブリッドと言う所か
「最後は血を飲まなかったそうです ひどい怪我でしたので冨岡さんが斬らなくても あのまま蝶屋敷で死んでたでしょうね」
「だが鬼は冨岡に斬られ鬼として死にたいと言ったか…」
「最後は冨岡さんに斬って下さいと頼んでたそうですよ」
干天の慈雨…水の型にだけ 鬼に苦痛を与えない型がある それを使ったのだろうな…
「冨岡が深月を斬った後 腹を切るんじゃねぇかと思って水屋敷に行ったんだ 深月って鬼は200年の間 鬼のせいで孤児になった子供を100人面倒みてやったらしい 自分はまだ100人分助けてはないから今は死ねねぇって…だから逢いたかったはずなんだ100年前の冨岡はな それを記憶がねぇって本当にあのバカたれが」
冨岡と鬼の最後を見送った不死川がドンとテーブルを叩いた 不死川は冨岡を嫌ってはいたが実力が拮抗していた者同士 色々複雑な思いがあったのだな