第1章 純白の衣
自分に着せられた白いワンピースを花嫁衣装ととるか、死装束ととるか …。
どちらにせよ、二度と自宅へ戻る事は無いのだと悟った。
視界を奪われ、
両腕の自由も奪われ、
感じるのは、素足で座り込んでいる地べたが無機質で冷たいって事ぐらい。
此処にいる経緯を話せば、『いつの時代だ』等と鼻で嗤われてしまうだろう…。
でも、私は、確実に、
【売られた】のだ。
この服を着せた人に、
まんまと騙されたのだ。
幼い頃にママを亡くし、パパと二人で過ごしていた。
何年か前にパパが照れながら連れて来た人は、
とても綺麗で、
笑顔が素敵で
優しくて、
温かくて、
私は躊躇いなく、『お母さん』と呼んだ。
すぐに懐いた。
でも、私が『お母さん』と呼んだ人は、最初から私が邪魔だったんだろう…。
高校生活ももうすぐ終わるという年齢になった私は、以前にも増して邪魔になったんだろう…。
『貴女に似合うと思ったの。これを着て、素敵な所で食事をしましょ』
あの笑顔が嘘だなんて。
今までの態度が全部嘘だなんて…。
あまりの絶望に、涙すら出なかった。