第8章 天下一品のご馳走&天下一の花嫁 / ◆
*天下一品のご馳走*
「へぇ…美味いな、さすがだ」
ある日のこと。
御殿の台所で料理を作っている美依の元を訪れた俺は…
その料理を味見しながら、感嘆の声を上げた。
たまには俺の夕餉を作りたい、と。
半刻ほど前から、美依は台所で料理を作っていた。
俺としては、嬉しくて嬉しくて仕方なくて…
何度も様子を見に来てはいたのだけど、ちょうど今料理が完成した所らしく、ちゃっかり味見である。
煮込まれた芋はほくほくとした食感で、味がよく染みているし、絶品という他ない。
これが俺の為に作られたと思えば…
みっともなくも心が弾んで、笑みが零れた。
「おいしい?良かったー!」
「ものすごく美味い、政宗より上手なんじゃないか?」
「それは褒めすぎだよ!でも……」
「でも?」
「秀吉さんの事を考えて作ったから、おいしく出来たのかもしれないね」
(……っ、そーゆー可愛い事を言うな)
にこにこと笑みを浮かべながら、愛らしい台詞を言ってのける美依。
いつも可愛いと思っていたけれど…
なんだかますます可愛く見えてきて困る。
────あ、これは非常にまずい
今すぐにでも美依を抱きたくなった。
だって、可愛すぎるから。
何と言うか、心の中から『欲しい』と言う渇望が生まれてきて…
それに飲まれてしまえ、と心の中で声がする。
こんな場所で…とはもちろん解っているけれど。
それでも、沸き上がる情欲は堪えきれないくらいに、激しく俺を焦がした。
「美依……」
「秀吉さん?」
俺が美依を挟んで机に両手を置くと、美依は俺の腕の中で可愛らしく首を傾げた。
あー…そんな仕草も可愛い、参るな。
俺は少し身を屈め、美依の耳元に唇を寄せる。
そして、逸る気持ちのまま…
その耳の中に、甘い声を直接注いだ。
「お前の料理は確かに美味い…が」
「……?」
「俺としてはお前を味わいたい」
「えっ……」
途端に美依の耳たぶが真っ赤に染まる。
顔を見れば、頬も朱に染めて、俺を見つめていた。
でも、言葉の意味は、しっかり理解したらしい。
俺が『な…?』と同意を促すと、美依は勢いよく首を横に振り、焦った声を上げた。