第3章 優しい手
声のする方を向くと
弟者さんが扉の所に立っていた。
「弟者くん?部屋にいたんじゃ……」
「の大きな声がしたから下りてきたんだ」
こっちへ近づくと
先ほどおついちさんがしてくれたように
私の身長にあわせてかがんでくれた。
「なんでそんな悲しいことを言うんだ?」
「だって……私……全然役に立ってなくて……」
の目から涙があふれて零れた
「役に立ってない?じゃあ、今朝俺と兄者を起こしてくれたのは誰だったかな?」
「……私です。」
「朝ご飯を食べ終わった後に食器を片付けてくれたのは?」
「私です。」
「なんだ。しっかりお仕事してるじゃあないか。おついちさんも、助かってるよな?」
後ろにいるおついちさんに弟者さんが尋ねる
「あぁ。とっても助かってるよ」
「ほら。お仕事をしたんなら、それ相応の対価を得るべきなんだ」
弟者さんの優しい手が私の涙を拭う
「そうだよ。ちゃん。」
おついちさんも、頭を撫でてくれた
「……私、ここにいてもいいんですか?」
の問いかけに二人は
「もちろんだ」
「もちろん」
と笑顔で答えた
その優しい声に、また大粒の涙がこぼれた
「……これ、どういう状況??」
車にエンジンをかけて戻ってきた兄者さんが尋ねる
「お前ら……を泣かせたな?」
「ちょっと待ってよ兄者!冤罪……!!」
今にも殴りそうな兄者さんにおついちさんがワケを話す
それを聞いた兄者さんが
「よし。お前ら。今日はのものすべて買いそろえるぞ」
「え……いいんですか?」
「弟者も言っていたろ?仕事をしたんだからいいんだよ」
と私を抱き上げながら言った。
「ほら。行くぞ」
青い車に乗せられて私たちは1日中買い物をした。