第41章 【Angel smile】
もう暖炉を見張る人間がいないと分かると、クリスとハリーはまるで帰る場所を示し合わせたようにグリフィンドールの談話室に選んた。
まだ誰もいない談話室は静かで、窓から差し込む朝日をいっぱい浴びている。こんな気持ちの良い朝は何年ぶりだろうと思わずにはいられなかった。
「――それで?」
「何が?」
「とぼけるな、アンブリッジはどうなったんだ?」
「あ~……」
ハリーは笑いながら、でも少し気まずそうにクリスから視線を逸らした。
そもそも、クリスは『嘆きのマートルのトイレ』で気を失って以来、ハリー達がどうやって魔法省に行ったのかも分からないのだ。
気が付いたら自分だけ置いて行かれた時の気分を思いだし、クリスはへそを曲げた。
「そりゃあな、あの時の私は確かに戦力外だったかもしれないが、だからって私を置いていくなんてな。友達甲斐がないにもほどがある」
「ごめんって……って言うか、クリスこそどうやって魔法省に行ったの?」
「普通に暖炉を使った。魔法省が見張ってるんだから、もしヴォルデモートが魔法省に入り込んでいたらすぐに分かるだろう?」
「うっわ、僕らもそうすればよかった……」
そんなに意外な方法だったのだろうか。ハリーは自分たちの選択手段を思い出し、ひどく落ち込んでいた。
それから、気を失っている間にいったい何があったのかを聞いたクリスは、正直に「なんて馬鹿なんだ」と感想を述べた。
まず皆シリウスがどうやってグリモールド・プレイスから離れた知るために、アンブリッジの暖炉を使ったというのだ。クリスはそれがまず愚策だと思ったが、あえて口を挟まなかった。
そして当然のごとくアンブリッジ率いる『尋問官親衛隊』に捕まり、ハリーは「磔の呪い」を掛けられそうになったという。
その時ハーマイオニーが咄嗟に機転を利かせ、言葉巧みにアンブリッジを禁じられた森まで誘導し、そのままケンタウロスの群れの中に置いてきたというのだ。
ケンタウロスはフィレンツェの一件以来かなり気が立っており、恐らく相当怖い目に遭わされただろう。
とにかく作戦は上手くいき、ハリー達はそのまま例の死んだ人しか見えない生物、セストラルに乗って魔法省のあるロンドンまで飛んで行ったというのだ。
クリスはそれを聞いて、もう一度素直に「なんて馬鹿なんだ」と言った。