第39章 【いざ魔法省へ】
『――クリス!』
誰かに呼ばれたような気がして、クリスは目を覚ました。頭がボーっとしていったい何があったのかさえも思い出せない。
この柔らかい感触から、取り合えず自分がベッドの上にいる事だけは分かった。それにこの白い天井は、医務室だろうか。誰かの騒ぐ声と、それをマダム・ポンフリーが叱る声がカーテン越しに聞こえてくる。
待て、どうして自分は医務室にいるんだ?確か、ハリーに呼ばれてマートルのトイレに行ったはずだ。
そうだ、そしてハリーがシリウスがヴォルデモートに捕まったという夢を見て……。
クリスはベッドから勢いよく飛び起きた。傍にかけてあったローブを羽織り、カーテンを開けると、医務室のソファーにドラコをはじめとする尋問官親衛隊の面々が、体のあちこちに酷い怪我をして手当てを受けていた。
「あらミス・グレイン。目を覚ましたんですね、良かった」
「先生!ハリーは?ハリー達はどこにいるんですか!?」
「分かりません。ただ目が覚めても 、自分たちが迎えに来るまでベッドで大人しくしていてくれと言っていましたよ」
マダム・ポンフリーは話しをしながら、せかせかとクリスの容態を調べた。
しまった、完全に置いて行かれてしまった。クリスは窓の外を見た。もう夕日がほとんど沈んで、オレンジ色の空に夜の帳が降りかけている。
なぜあんな大事な場面で気を失ってしまったんだろう。クリスは悔しさのあまりベッドの手すりを殴った。
ハリー達はいつ帰ってくるんだろうか。シリウスを助ける事は出来たのだろうか。もしかして、みんなヴォルデモートの魔の手に落ちてしまったのだろうか。
頭の中が謎と不安だらけで、どうにかなってしまいそうだった。考えろ、考えろ、考えろ、こんな時どうしたら――。
その時ふと、妙案が浮かんだ。そうだ、この学校のほとんどの暖炉は、魔法省に見張られている。それを逆手に取ればいいんだ。
つまりどこかの暖炉から魔法省に行こうとすれば、まず間違いなく魔法省の役人に出会えるはずだ。そこで事態がどうなっているのかが分かる。