第37章 【真の悪夢】
「ネサラ、何があった?敵か?ヴォルデモートか!?」
クリスの問いかけに、ネサラは首を振り、代わりにハーマイオニーのカバンに頭を突っ込み、中から『魔法生物飼育学』の教科書を引っ張り出した。
「『魔法生物飼育学』の教科書……まさか、ハグリッドの身に何か!?」
クリスは慌てて窓に近づき、外を見た。
ここからじゃよく分からないが、ハグリッドの小屋に近づく黒い人影が見える。
それも1人じゃない、少なくとも5人くらいいる。
なぜこんな時間に……そう思っていると、小屋の周りを囲んでいた人影が、一斉に杖から閃光を放った。と同時にバーン!と大きな音がして、ハグリッドが出てきた。
すると今度は赤い閃光が一斉にハグリッドめがけて飛んで行った。
あれは恐らく失神呪文だ。――危ない!そう思った瞬間、驚くべきことに閃光はハグリッドの体を貫くことなくはね返った。
ホッとしたのもつかの間、次々と閃光がハグリッドめがけて飛んでいく。
ハグリッドは吼え、木の幹の様に太い両腕を振り回し、誰1人として近づかせない。
その時、新たに校庭に1人の人影が飛んで来た。あの見慣れた三角帽子は、マクゴナガル先生だ。
「何と言う事を!お止めなさい、この卑怯者!!」
マクゴナガル先生の声が、校庭に響く。
するとハグリッドに集中していた人影が、今度はマクゴナガル先生の方を向いた。そして――
「止めろっ!!」
クリスの声もむなしく、一斉に赤い閃光がマクゴナガル先生の胸を貫いた。
先生は草むらに倒れ、動かなくなった。
「……悪夢だ」
そう、それは――それこそが正しく、悪夢だった。