第37章 【真の悪夢】
その日の実技試験が終わると、クリスは上手くいかない憂鬱さよりも、長く続いた悪夢が終わった気持ちの方が強かった。
どうせ受からないなら、さっさと終わらせて次の課題に移りたい。そんな気持ちでいっぱいだった。
その次の日も、同じように5年生と7年生はそれぞれのテストを受けた。
その日は『変身術』のテストだった。筆記試験は前日同様、良い結果が出せたと思ったが、実技は相変わらず杖の先から火花を散らせただけに終わった。
3日目も同様に終わり、4日目の『マグル学』では、最高の出来だと自分でも褒められるほどスラスラ問題を解く事が出来たし、交流電池を使ったミニ四駆を組み立てるという実技では、他の誰よりも無駄なく作業が進められた。
5日目の夜は、『天文学』のテストだった。
このテストでも、クリスは満点に近いのではないかと自負するほど良い出来だった。
ただ昼に行われた『薬草学』では、数少ない杖を使わない実技のテストにも拘らず、あまり良い結果は出せなかった。
ホグワーツに入学して丸5年、クリスは何も変わっていない自分に、焦りと共に賞賛に値する頑固っぷりだと自負した。
「まあ、あれだ。来年同じ教科を受けられるのは数少ないかも知れないな」
土曜日の朝、『魔法薬学』の準備をしている最中、クリスが何の気なしに呟いた。
ハッキリ言ってハリーとロンが来年『魔法薬学』を選択するとは思えなかったからだ。
しかし、ハリーが小さい声で驚くべき科白を吐いた。
「僕……取るよ、来年も『魔法薬学』」
「えっ!?何故!?そんなにスネイプに虐められるのが快感だったのか?」
知らなかった、ハリーはマゾヒストだったんだ。驚愕の事実に恐れおののいていると、ハリーが慌てて言葉を付け足した。
「必須なんだよ、闇払いになるのに」
「ハリー、将来は闇払いを希望しているのか?」
「……いけない?」
「いや、と言うより……もう半分なっているんじゃないか?」
ホグワーツに入学してから、何度ヴォルデモートを打ち負かしているんだか。それを考えたら、並みの闇払いよりも遥かに功績を残している。