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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第35章 【進路相談】


 流石はマクゴナガル先生、クリスがヴォルデモートそっくりの顔で脅しても、ビビるどころか諫めるほどの余裕がある。
 先生はさらに山の様な羊皮紙の束から、クリスの現在の成績表らしきものを取り出した。

「貴女の現成績ですと、『薬草学』だけはかなり勉強しないと、単位を取るのが難しいでしょう。その点、『魔法薬学』『天文学』『マグル学』はずっと高得点を取り続けていますね。この中で、何か就きたい職はありますか?」
「えへん、えへん!」
「そうですね。『マグル学』も『天文学』もかなり魅力的ではあるのですが……」
「ですが、なんです?」

 クリスは言いよどんだ。
 もし召喚術の研究をしたいと言ったら、先生方はどうするだろう。何を馬鹿な話を、と一蹴するだろうか。それとも何かいい案を出してくれるだろうか。
 悩むクリスの背中を押すように、先日のフィレンツェの言葉を思い出した。

『貴女には、精霊の加護がある』

 クリスは目を閉じて小さく深呼吸をすると、思い切ってマクゴナガル先生に打ち明けた。

「先生、私、研究がしてみたいんです――召喚術の。これは、その、ある意味……私にしかできないことかもしれませんし……」

 最後の方はしょぼしょぼと尻すぼみになったが、言った。とうとう言った。
 まだ思い付きの段階で、ハリーやロンやハーマイオニーに相談すらしていないことを、進路指導という大事な場面で言ってやった。

 マクゴナガル先生は呆れただろうか、それとも喜んだだろうか。
 どちらにせよ部屋はシーンと静まり返り、クリスは自分のどがカラカラなのに気付いた。さっきまで膨れ上がっていた気が、だんだんと小さくなっていく。

「あの……やっぱり、無茶ですよね?」
「正直に言わせて頂くと、現段階ではそれはとても険しい道となるでしょう」
「やっぱり、そうですよね……」

 クリスが聞こえるか聞こえないか小さい声で答えると、マクゴナガル先生はズオオオォォっと言う音が聞こえるほど勢い良く鼻から息を吸い込んだ。
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