第35章 【進路相談】
「うわっ!」
「わあ!!」
廊下をボーっと歩いていたせいで、誰かとぶつかってしまった。こんな時間に廊下をうろついているなんて誰だろうと思ったら、なんとハリーだった。
そうか、今日はハリーもスネイプとの『閉心術』の訓練の日だったのか。
「悪いな、ハリー。ちょっとボーっとしていて」
「ぼっ、僕の方こそごめん。怪我なかった?」
ふと見ると、ハリーは顔面蒼白で汗びっしょりだった。
『閉心術』の訓練の後は大抵青白い顔で生気が抜けていたが、それとも少し違う。まるでこの世で一番恐ろしいものを見た直後のようだった。
「大丈夫かハリー?なんか変だぞ」
「あの、僕……ううん、なんでもない」
そう言って、ハリーは足早にその場を後にした。
どう見ても『何かあっただろう』ハリーの背中を見つめながら、クリスは置いて行かれないように走って後を追った。
* * *
ついにイースター休暇が明けると、5年生の全員が自習の間の時間を使って、己の進路について語り合った。
それなのに、ハリーときたら時々ボーっと窓の外を見つめたり、難しい顔をしてそわそわしてばかりで、心ここにあらずの状態だ。
これは――きっとこの間のスネイプとの課外授業で何かあったに違いない。
「ハリー、まさかスネイプと何かあったのか?」
「えっ?う、ううん。違うよ」
そう言いながら、ハリーは手近にあった職業パンフレットをひっぱって、ぶつぶつ声に出して読み始めた。
長年の勘で分かる。ハリーは図星の場合、大抵こうやって相手の顔を見ないようにする。
「それじゃあ、またチョウ・チャンなの?」
ハーマイオニーの呆れたような声が、ハリーを責めた。するとハリーはハーマイオニーからパッと目を反らしてふうっとため息を吐いた。
雰囲気から察するに、どうもハリーとチョウは上手くいっていないらしい。
それに輪をかけるように、チョウの友達であり密告者のマリエッタとの事で、口論になったというのだ。
内心いい気味だとクリスは思ったが、それを口に出すのは流石にはばかられるので止めておいた。