第34章 【DA危うし!】
「これをアンブリッジ先生に渡して!今すぐ!――さて、私たちは楽しい楽しい時間に戻りましょうか、クリス?」
「これが楽しいだと?ずいぶん倒錯的に成長したみたいだな」
「そうよ、わたしはもう貴女の知るパンジーじゃないの。彼を手に入れるために、努力して、努力して、努力して、努力して――」
「――それで?手に入ったのか?それとも手に入らなくてこんなにイラついているのか?」
生と死の瀬戸際に来てまで皮肉るなんて、自分でも性格が悪いと思う。
クリスが紅い瞳をパンジーに向け弓なりに曲げると、パンジーの顔から血の気が引いた。
「ええ、そうよ、まだよ。まだ最後まで手に入れてないわ!だから私は貴女を――殺す!」
パンジーが杖を振り下ろそうとしたその時、赤い閃光と緑の閃光が勢いよく螺旋を描いて部屋の中を飛びまわり、煙幕の様な黒い煙がもうもうと立ち込めた。
いったい何が起こったのか分からなかったが、拘束が緩んだので、クリスは口を手で覆って状況を把握しようと試みた。
「バカ、下を向くんだよ」
その声と共に、クリスの頭をグッと下に向ける手がのびてきた。
この声はフレッドかジョージのどちらかだ。双子なので聞き分けできないが、あの2人なのに間違いはない。
クリスが言われた通り頭を下げて様子を伺うと、黒煙は上へ上へと上昇しており、足元の辺りはまだ微かだが辺りが見通せる。
姿勢を低くし、パンジーたちが放った光線と黒煙に手こずっている間に、クリスは『必要の部屋』から脱出した。
「はー、びっくりした。暴れバンバン花火の試作品を持ってきて大正解だったぜ」
「備えあれば憂いなし、ってやつだな兄弟」
「ああ、お陰で助かっ――痛たたぁ!」
あの窮地から脱出してほっとした瞬間、今度はパンジーにやられたところが突然痛み出した。
パンジーの奴はいったい何を考えているんだ。昔からドラコ一筋のやつではあったが、あそこまで病的ではなかった。
いったい何がパンジーをあそこまで変えてしまったんだろう。
疑問は付きまとったが、とにかく医務室に行ってけがを治療してもらおうと、フレッドとジョージと一緒に医務室へ行った。