第4章 【大人げない大人】
「私の……何だって?」
ハリーが目を白黒させながら訊ねると、シリウスが前髪をかき上げ、ため息まじりに答えた。
「私の母上だ。あのクソババア、自分の肖像画の裏に永久粘着呪文を掛けたらしく、この1カ月この絵を剥がそうとありとあらゆる手を使ったが1ミリたりとも動かない」
ハリーとシリウスが話しているのを横で見ていると、ロンがクリスの肩をツンツンと突いた。そして耳元で「ハリーへのバースデーカードを持ってこようぜ」と囁いた。
そうだ、今日はハリーの誕生日なのだ。クリス達はこっそりと階段を上って行くと、それぞれの部屋にカードを取りに行った。クリスはまだ書き途中だったカードに急いでメッセージを書くと、慌てて階下に降りていった。
「君達、どこに行ってたの?」
「何でもないよ。それよりハリー、ちょっとここで待っててくれないか?」
ロンとハーマイオニーはハリーを食堂の扉の前で一旦足止めさせると、クリスと一緒に慌てて中へ入った。
食堂は薄暗く、中にはウィーズリーおばさんをはじめ、ウィーズリーおじさん、その息子のビル、フレッドとジョージ、ジニーのウィーズリー家の皆。
それからルーピン先生、シリウス、トンクス、そして奥の方に見覚えのないチンピラ風の男の顔がぼんやりと見えた。
ウィーズリーおばさんは、昼間みんなで作った大きなバースデーケーキに15本の蝋燭をさすと、杖を一振りし火をつけた。
「さあ、みんな準備は良い?」
おばさんは入り口のドアに手をかけ、みんなの方を振り返った。そして嬉しそうにパッとドアを開けた。
「「「お誕生日、おめでとうハリー!!」」」
ドアが開いた瞬間、用意していたクラッカーや紙テープがハリーに降りそそいだ。
突然のサプライズにハリーは目を点にして口をぽかんと開けていた。入口の所で棒立ちしているハリーを双子が左右から挟んで中へ招き入れると、ジニーがもじもじしながらハリーの前に進み出た。
「これっ、バースデーカード!受け取ってもらえる?」
顔を真っ赤にしながら、ジニーはカードを差し出した。呆然としたままハリーがそれを受け取ると、ジニーは「きゃっ」と言ってビルの後ろに隠れてしまった。