第30章 【心の拠り所】
週末と言えば、本来なら生徒達にとって愉しい休日の始まりである。
だが『O・W・L』の試験を控えたクリス達4年生は、教師達から出された山の様な宿題を片付ける苦痛の日の始まりでしかなかった。
それに加え、ハリーはスネイプと約束した月曜日を目前に控えている。
クィディッチと言う楽しみも禁止になっているハリーは、まるで翼を失った鳥の様にみるみるうちに元気を失っていった。
「ハリー、そろそろ6時だよ」
「うん……じゃあ行ってくるね」
月曜の6時になると、ハリーは死刑宣告を受けた囚人の様な顔で談話室を出て行った。
最早ハリーにしてあげられる事は何もないので、クリス達は談話室のテーブルを丸々1つ占領して、ただ黙々と宿題をこなしていった。
クリスは実技試験が絶望的な分、筆記試験だけは何が何でも落とせないので必然的に机に向かう量が他の人より増えてしまう。
この日も、殺人的な量のレポートや調べものにまみれること1時間。クリスが終わりのない作業に辟易としていると、スネイプとの閉心術の特訓を終えたハリーが、青い顔をして談話室に戻ってきた。
「大丈夫か、ハリー?」
「うん、大丈夫……じゃないかもしれない」
ハリーは額の傷に手を当てながら、ドサッとロンの隣に腰かけた。そして閉心術の特訓中、自分の身に起こった事をもう1度見つめ直し、整理するようにゆっくり話しだした。
「閉心術の特訓でさ、過去の記憶がこう……断片的にフラッシュバックしてきたんだ。その中で、時々夢で見ていた不思議な廊下が見えて……。僕てっきり、それは夢の中の風景だと思っていたんだけど違った。あれは魔法省で裁判を受けた時に見た廊下だったんだ」
「それで、その廊下がどうしたの?」
「前に僕が、蛇の眼を通しておじさんを襲った夢を見ただろう。その廊下と神秘部に続く廊下が一緒だったんだ」
「それじゃあ、パパが守っていたものが――えっと『例のあの人』が欲しがっているものが、神秘部にあるって言いたいのかい?」
「うん、間違いない。ただ何を守っているのかまでは分からないけど……」