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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第27章 【それぞれのクリスマス】


 声がするのは厨房からだった。扉の隙間から少しだけ明かりが漏れ、中から複数の男性の声が聞こえてくる。
 なにやら不穏な空気を感じ、クリスはそっと扉に耳を当てた。

「だからこそ、1人でも多い護衛をだな」
「だからってシリウスが行くことは――」
「待て!……ほう、グレインか。丁度良い、入れ」

 クリスはいきなり名前を呼ばれて驚いたが、震える手で扉を開けると、そこにはルーピン先生とムーディ先生、それにシリウスとキングズリーの4人が、机を挟んで対峙していた。
 ムーディ先生が魔法の眼で四方八方を警戒しながら、普通の方の眼でクリスを見つめた。

「今、お前をサンクチュアリの屋敷まで護衛する為のメンバーを決めていたんだ」
「ごめんねクリス、私たちの大声で起きてしまったのかい?」
「いえ、元々この時間は本を読んでいる事が多いので……あの、護衛のメンバーって?」
「最初は私とムーディ、それにルーピンの3人で向かう事になっていたんだ。それなのにシリウスが……」

 そこまで聞いて、クリスは全てを察した。屋敷の中で大人しくしている事に我慢できなくなったシリウスが、これは外に出る良い機会だと思って護衛を志願したんだろう。
 その気持ちも分からなくはないが、だからと言ってシリウスにもしもの事があったらと思うと、簡単に同行させることは出来なかった。

「その……シリウス」
「どうかクリスからも言ってくれ、私が護衛に着いて行くのに異論はないと」
「ごめん、気持ちは嬉しいが、シリウスは屋敷で待っていてくれ。もしものことがあったら、その……」
「グレインの方が冷静だな。決まりだシリウス、護衛は私達3人で行く。これ以上の話し合いは無駄だ」

 気を悪くしたのか、シリウスは何も言わず黙って厨房から出て行った。クリスは慌ててその後を追った。
 シリウスは足早に階段を上って行く。その背中を見ながら、クリスは焦燥感に駆られた。
 早くしないと、シリウスを傷つけたままになってしまう。クリスは真夜中だという事も忘れてシリウスの名を叫んだ。
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