第27章 【それぞれのクリスマス】
それからクリスマスまでの間、クリス達はシリウスの命令で屋敷中を掃除して飾りつけをさせられた。
シリウスは10数年ぶりにまともなクリスマスを祝える事になったと大張り切りで、いつも嬉しそうに鼻歌を歌いながら、屋敷の隅から隅まで徹底的に綺麗にした。
その甲斐あって、クモの巣のはったシャンデリアは元の輝きを取り戻し、ボロボロの絨毯には綺麗な真っ白い魔法の雪が積もり、忌々しいブラック家の家系図の前には天辺に大きな星をつけたクリスマスツリーが飾られた。
護衛対象であるハリーとクリスが屋敷にいる所為か、騎士団のメンバーも時折姿を見せる機会があった。
大抵みんな長い時間は滞在できなかったが、ルーピン先生が来た時を狙って、クリスはサンクチュアリの屋敷に戻れないか訊ねてみた。
「1度で良いんです。父がいなくなって、屋敷がどうなっているのか心配なんです」
「クリス、気持ちは分かるが……」
「良いじゃないかリーマス。クリスマスなんだ、お願いごとの一つや二つ聞いても罰は当たらない」
「どうかお願いします!!」
シリウスの一言が効いたのか、それともクリスが必死に頭を下げたのが効いたのか、ルーピン先生は降参だと言った表情で肩をすくめ、ため息交じりに微笑んだ。
「分かった、私からもムーディに頼んでみよう。だけど、あまり期待はしない方が良いよ」
「ありがとう御座います!」
「良かったな、クリス」
「ああ!シリウスもありがとう!」
良かった、これでチャンドラーがどうして手紙を返さなかったのか、直接聞く事が出来る。
クリスが嬉しそうにニッコリ笑うと、何故かほんの一瞬間をおいてから、シリウスも同じように笑ってクリスの髪をくしゃっと撫でた。
クリスマス・イブの夜、クリスがいつもの様に本を読みながら夜更かしをしていると、階下から吠えるような怒鳴り声が聞こえてきた。
……いったい何があったのだろう。クリスは一瞬迷ったが、好奇心に勝てず、部屋を出て話し声がする方へゆっくりと歩いて行った。
「だから、犬の姿なら問題ないだろう!?1度は成功しているんだ!!」
「大勢が集まる駅のホームとは違う!あそこには罠が潜んでいる可能性だって十分にある」
「私も同感だ、あまりにも危険すぎる」