第26章 【盗み聞き】
うっすらと夜が明け始めた頃、玄関のベルが鳴ったのを合図に、屋敷にいた全員が部屋から飛び出した。
玄関先にはウィーズリーおばさんが疲れた顔で笑っていて、その顔を見て、フレッド、ジョージ、ロン、ジニーの4人はたまらず母親に抱きついた。
「今、ビルがお父さんを看てくれているわ。午後になったらみんなで面会に行きましょう」
「……ママ」
「そんな顔しないの、お父さんは大丈夫だから。それよりも、ハリー、彼方にお礼を言わなくちゃ」
ハリーは驚きの表情を隠せなかった。きっとハリーの中では、今でも蛇となってウィーズリーおじさんを襲った時の感覚が残っていたからだろう。責められはしても、まさかお礼を言われるなんて思ってもみなかったようだ。
「彼方がいなかったら、アーサーは手遅れになっていたかもしれない。それにダンブルドアが、何故アーサーがあそこに居たか上手い口実を作る時間も稼げたのよ。本当に、彼方には感謝してもしきれないわ」
ウィーズリーおばさんが感謝と共にハリーを抱きしめると、ハリーは複雑そうな顔をした。
それからウィーズリーおばさんは、シリウスに「子供たちを一晩中見ていてくれてありがとう」とお礼を言った。シリウスは笑って、「少しでも役に立てたなら嬉しい」と答えた。
それから、もし良かったらウィーズリーおじさんが入院中はこの屋敷に泊まらないかと提案した。
ウィーズリーおばさんは、それまで向けたことがない様な笑顔をシリウスに向けた。
「ありがとう、シリウス。そう言ってくれると本当に助かるわ。アーサーはしばらく入院しなくてはならないから、何かあった時の事を考えると、家よりもこっちの方が近いから安心できるわ。そうなるとクリスマスもここで過ごすことになるけど、よろしいかしら?」
「もちろんだ!大歓迎だよ!!」
シリウスはもうクリスマスが来たのかと言うくらい、満面の笑みを見せた。
それから疲れているウィーズリーおばさんに代わって、朝食の支度をさせようとクリーチャーを呼んだが、クリーチャーは現れるどころか返事もしかなった。