第25章 【夢であれば】
「こんな夜更けに誰かと思ったら、貴女でしたか、マクゴナガル先生。それに――」
ダンブルドアの海の様なブルーの瞳が、ハリー、ロン、クリスをじっくり捉えた。
少年の様にキラキラ輝く時もあれば、不思議と全てを見透かされそうなほど深い色を湛える時もある。今日はその半分半分と言ったところだ。
薄暗い照明の中で、ダンブルドアの目が少し細くなったのが分かった。
「率直に申し上げます、ダンブルドア。ポッターが夢を見たそうです」
「夢じゃありません!……あっ、いや……眠っていたのは確かなんですけど……」
ハリーは一生懸命頭の中を整理しながら、何とか自分の見た夢の詳細を思い出そうと必死になっていた。
「僕、見たんです。ロンのお父さんが、巨大な蛇に襲われたのを。夢ではなく――現実に起こっている事として」
「ふむ……それはどんな風に見たのかね?」
「え?いや、だから眠っていたけど夢ではなく、現実の事として――」
「そうではなく、襲われたのを見たのはどの視点だったのかと聞いておるんじゃ。頭上から第3者の様に見ていたのか、それともどこか隙間から覗いていたのかと」
一瞬、ハリーは言葉を詰まらせた。目を見開き、まるでダンブルドア先生の言葉が信じられないと言いたそうな感じだった。それからハリーはゆっくり言葉をつむいだ。
「僕が蛇でした……全部僕の、いや――蛇の目から見ました」
それを聞くや否や、ダンブルドア先生は素早くたち上がり、飾られている歴代の校長の肖像画に向かって声を張り上げた。
「エバラード!彼方の出番だ!!」
それまで目をつぶっていた肖像画が、まるで声をかけられるのを待っていたかのようにパッと瞼を開いた。
黒い短髪の青白い神経質そうな顔をした魔法使いが、ダンブルドアの方を向きながらも、チラチラとクリス達に向かって、物珍しそうな視線を送っている。
「聞いておったじゃろう、その男は赤毛で眼鏡をかけておる。済まぬが急いでくれ、手遅れになると不味い」
「了解した」
そう言うと、エバラードと呼ばれた魔法使いは額縁からパッと姿を消した。
魔法界の肖像画が動くのは当たり前の事だが、こんな風に肖像画から姿を消すことは稀だ。大抵は隣の額縁に移動するだけだが、どうやら歴代校長の肖像画は勝手が違うらしい。