第23章 【帰ってきたハグリッド】
急いで窓の外を窺うと、確かに激しく雪が舞う暗闇の中、ハグリッドの小屋にぼんやり明かりが灯っているのが見えた。
こうしてはいられない。クリス達は顔を見合わせ、ダッシュでお互いの部屋に戻ると、コートとマフラーを引っ掴んで談話室に戻って来た。
そしてハリーの透明マントを被り、こっそり、だがなるべく早足でハグリッドの小屋へ直行した。
「ハグリッド!居るんでしょ!?僕だよ、ハリーだよ!」
ハリーがドンドンと扉を叩くと、中からファングの吠える声が聞こえた。それと一緒に、小屋の中から物音がする。間違いなくハグリッドが戻って来た証拠だ。
4人の顔に笑顔が広がる。しかし、扉が開いた瞬間その笑顔が180度ガラリと変わった。
「よお、お前ぇさん達か。久しぶりだな」
ハグリッドの顔を見て、とても気さくに「久しぶり」等と言える状況ではなかった。
何しろハグリッドの顔の半分はどす黒い痣に覆われ、所々腫れ上がり、血まで流しているではないか。4人は挨拶の代わりに悲鳴を上げそうになった。
「どうしたの!?ハグリッド!!」
「何でもねえ、何でもねえ。さあ、中に入れ」
招かれるまま中に入ってマントを脱ぐと、ハグリッドは疲れた様に椅子にどっかり座って、痣に覆われた顔に緑色の分厚い生肉をビチャッと張り付けた。
何の肉かは知らないが、こんな物で傷が良くなるはずがないと思ったクリスだったが、ハグリッドは低い声で「あ゛~」と唸って気持ちよさそうにしていた。
「ハグリッド……何があったの?」
「何度も言ってるだろう、何でもねえって。それより夏休みはどうだった?」
「話しを逸らさないでよ!ねえ、何に襲われたの!?」
「悪い事は言わないハグリッド、今すぐマダム・ポンフリーの所に行くべきだ!」
ハグリッドは小煩いハエを追い払うかのように手を振って会話を打ち消した。
今まで姿どころか手紙の1通さえも寄こさず、返って来たと思ったらこの状態。ハッキリ言って心配するなと言う方が無理だった。
事情を聞き出す為、頑なな態度を示すハグリッドにハリーが奥の手を出した。
「分かった。ハグリッドが何も喋らないなら、僕も夏休みに何に襲われたのか喋らない事にする」
「襲われた!?いったいどういう事だ!?」
「さっき言ったよね?ハグリッドが話さないなら僕も話さないって」
