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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第22章 【パンドラの箱】


 みんな大満足の第1回DA集会から数日後、聖マンゴ病院での治療を前日に控えた朝、クリスはマダム・ポンフリーから連絡を受けた。曰く、引率するから明日の朝10時に医務室に来るようにとのことだ。
 クリスは素直に「分かりました」とだけ答えたが、正直あまり良い気分ではなかった。

 会合で自分の無力さを嫌というほど痛感し、更に何をされるか分からないまま慣れない病院通い。まっとうな人間ならストレスにならない訳がない。
 いつものクリスならキレて周りに当たり散らしていたかもしれないが、クリスの中の何かが思いとどまらせていた。

「ん~、やっぱりミルクティーにはロイヤルブレンドだな」

 触らぬ神に祟りなしと、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人は黙々と朝食を取っていた。クリスのことだ、いつ爆発するか分からない。
 しかしクリスはいつもの様に紅茶だけの朝食を楽しみ、いつもの様に『魔法史』の授業では爆睡し、いつもの様にアンブリッジの授業では頬杖をついて教科書を読む振りだけしていた。
 こんな事は予想外だと思った3人だったが、あえて口には出さなかった。

 放課後、談話室で4人1つのテーブルを占領して宿題を片付けていた時のこと、クリスがあまりにもいつも通りなので、逆に怖くなったハリーが恐る恐る質問した。

「あの……クリス、明日は病院なんだよね?」
「ん?ああそうだが?」

 放課後、談話室で4人で一つの机を占領して宿題を片づけていると、ハリーが恐る恐る尋ねてきた。クリスはそれに対し」まるで当たり障りのない天気の話題でもふられたかの様に返答した。
 ――おかしい、いつものクリスなら舌打ちの一つでもしているはずだ。試しにハリーはさらに突っ込んだ話題を振った。

「そういえば、魔力の方はどうなの?少しは戻ってきた?」
「一朝一夕で戻るわけがないだろう。ああ、でも……」

 ふと、クリスが何かを言いかけた。その時のクリスの顔は、見ている方が悲しくなるほど傷ついた表情をしていたが、一瞬のうちにいつもの顔に戻っていた。
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