第21章 【DA】
「皆、一旦ストップだ!ストップ、ストーップ!」
ハリーが大声とともにホイッスルを鳴らすと、皆がハリーの方を向いた。ハリーはそれぞれ悪かった点を指摘して、正しいやり方とコツを教えた。
それからもう1度皆に実践させ、ハリーはその間を見回って改善点を教えたり、助言をして回った。
当然といえば当然だが、クリスは1度も術が成功しなかった。練習を始めて1時間が経過するころ、相手役のネビルは12回も術を成功させていた。
「ねえハリー、もうそろそろ時間じゃない?」
ハーマイオニーの言う通り、時刻はもう9時を10分過ぎている。このままだと巡回しているフィルチに見つかって、罰を受ける事になるかもしれない。
ハリーは急いでホイッスルを鳴らして皆を止めさせると、次回の会合について話をした。散々話し合った結果、結局次の会合は来週の水曜日に決まった。
それからが大変だった。皆を4、5人のグループにすると、『忍びの地図』を使って、周囲に先生やフィルチがいないか確かめてから寮に戻らせた。
全員無事に寮に戻ったことを確認すると、最後にハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーが『必要の部屋』を後にした。
4人が談話室に着くと、興奮冷めやらぬロンがハリーに話しかけた。
「最っ高だったよハリー!去年やった『三大魔法学校対抗試合』の練習の時よりずっと良い!!」
「そうね、今日は凄く有意義だったわ」
「ねえ見た?僕がハーマイオニーから杖を取り上げたの!クルクルーって回て……」
「そのまま掴み損ねて床に落としたのよね?」
痛いところを突かれ、ロンが一瞬苦い顔をした。それでも今日の訓練は、振り返れば振り返るほど次回への期待で胸が膨らんだ。ただ1人、クリス以外は。
クリスが僅かに下を向いているのに気付いたハリーが、声をかけた。
「どうしたの、クリス?」
「ん?いや、なんでもない。今日は楽しかったな」
クリスは自分の心に嘘を吐いて笑顔で返した。
魔法が使えないという事を改めて実感させられて気分が落ち込んだが、こんないい成果を残した日に、自分だけ無為な時間を過ごしたとは、口が裂けても言えなかった。
しかし会合の度にこんな気分を味わうのかと思うと、それだけで胃がズシンと重くなるのを避ける術は、生憎持ち合わせていないクリスだった。