第18章 【抉られた傷跡】
「貴女のお父様、例のあの人に殺されたんですって?」
途端に、ブワッと全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。――と、同時に内臓がねじくり返り、強い吐き気をもよおした。
あの墓場での出来事が、意図しなくても鮮明に蘇る。
……ドクン、ドクンと心臓が大きく鼓動し、不気味なことに耳に入ってくるパンジーの言葉と同時に、頭の中でトム・リドルの声が響いてきた。
(呪われた子……忌み嫌われた子供……)
「可哀想よねぇ、これで貴女は独りぼっち」
「…………さい」
(お前なんて生まれてこなければよかった)
「どうせ親同士が決めた約束事。これで見事婚約破棄」
「………るさい」
(お前が生きている限り不幸が訪れる)
「今お父様にお願いしているの。私をドラコの許嫁にして欲しいって」
「……うるさい」
(お前なんて死ねば良い……死ねば良い……)
「だって、魔法も使えないスクイブにドラコの許嫁なんて務まらないでしょ?」
「うるさいっっ!!!」
クリスが叫んだ瞬間、店中のガラスが次々と音を立てて割れ、砕け散った。
そればかりか、ちょうどクリス達の真上にあったシャンデリアの鎖が切れ、勢いよく落下してきた。
咄嗟にパンジーは身をひるがえしたが飛び散った破片で怪我を負い、その反対に、クリスは同じ場所に居たにも拘らず怪我1つしていなかった。
突然の出来事に、誰もが口を開く事が出来ず茫然としていた。
やがて我に返ったパンジーが、クリスを指さしてこう言った。
「あいつよ!あいつがやったのよ!!悪魔!あいつは悪魔よ!!」
クリスは何も言えず、ただ立ち尽くすのみだった。
そんなクリスの耳元で、またもリドルの声が聞こえてきた。
(ほら、お前の所為で皆が不幸になる。呪われているんだよ、お前の中に流れる血は――)