第17章 【ハーマイオニーの計画】
「あの話だけど――僕、やっても良いよ」
その言葉があまりに突然だったので、ロン、クリス、ハーマイオニーは一瞬思考が停止した。
そしてそれがここ2週間胸に期待し続けてきた答えだと分かると、クリスの顔から思わず笑みがこぼれた。
「ありがとう、ハリー!」
「……君のそんな顔、久しぶりに見た気がする」
「ん?」
「いや、何でもない。それで?具体的にはどうするの?」
「今度のホグズミード行きの日に話すわ。ここじゃ、誰が聞いているか分からないから」
立案者のハーマイオニーは、嬉しそうに目を輝かせた。
もちろんハーマイオニーだけではない、ロンもクリスも胸のつかえが取れ、その日の午後は久しぶりに心地よく過ごせた。
アンブリッジの『闇の魔術に対する防衛術』の授業中でも、このババアを出し抜いて自分たちだけで『防衛術』を学ぶのかと思うと胸が躍った。
その反面、クリスはいつまでたっても魔力が戻らない自分に焦りが出てきた。
授業の合間をぬっては魔法を使う練習をしていたが、これと言った成果は出ていなかった。
「焦るなよ、クリス。もし不安なら癒者に相談してみるのも手だよ」
「ああ、そうだな」
ショックを隠し切れず落ち込むクリスに、ロンが慰めの言葉をかけた。
もし、クリスがマグル生まれだったらここまでショックを受けなかったかもしれない。マグルとして魔法のない生活を送っており、11歳になった時、初めて自分が魔法使いだと知らされホグワーツに来たならば。
しかし、実際は全く逆の立場だった。生まれた時から当たり前の様に魔法のある世界で生き、魔法と共に暮らして来た。それがある日突然、魔法が使えなくなった。
それがどれ程のショックなのか――推し量ることは出来ない。
(だが考えようによっては……この方が良いのかもしれない)
魔法が使えぬという事は、ヴォルデモート側としても利用価値がないという事だ。“殺される事”はあっても、“殺させる事”はない。
クリスは軽く目を閉じた。すると瞼に、黒づくめの男がゆっくりと地面に倒れる姿た浮かび上がる。
(もうあんな過ち、2度と起こさせてたまるものか!)
クリスはギリッと奥歯を噛みしめると、爪が食い込むほど強くこぶしを握り締めた。