第16章 【トレローニーに同情した日】
クリスが出された宿題を全て終わらせた頃、時刻は明け方の4時近くになっていた。
まだ日は昇っておらず、暗い部屋の中でクリスは杖を握って1年生の頃に習った簡単な呪文を唱えた。
しかし杖はうんともすんとも言わない。何回か呪文を試していたが、何の変化もないのでその内馬鹿らしくなって止めてしまった。
なぜこんな事になったのか――思い当たる節がありすぎてどれとも言えない。
やがてクリスは考えるのを止めた。少しだけでも仮眠をしようかとも思ったが、またあの悪夢を見るかと思うと眠るのが怖い。
仕方なく、クリスは図書館から借りてきた本を開いた。今日の本は『ローザリア皇帝・カール3世』と言う伝記小説だ。
正直言ってつまらないが、暇をつぶすのにはちょうど良い。
クリスが心を無にして本を読むこと数時間。朝日が昇り、隣のベッドからガサゴソと音がしだすと、クリスは天蓋ベッドのカーテンを捲った。
「おはよう、ハーマイオニー」
「お早う。また徹夜?」
「ああ、だから今日の宿題もよろしくな」
全く悪びれる素振りもなくそう言うと、ハーマイオニーはため息を吐いた。
身支度を終え、2人そろって談話室に降りていくとハリーとロンが待っていた。
昨夜遅くまで宿題をしていたから、2人ともとても眠そうだった。クリスが「おはよう」と挨拶をすると、ハリーもロンもあくび交じりに返事をした。
「おはよ~、今日の授業ってなんだっけ?」
「1限目から『魔法史』だ。寝るにはもってこいだぞ」
「あら、そんな事して『O・W・L』に落ちても知りませんからね」
ハーマイオニーがツンとそっぽを向くと、ロンが「シリウスの言う通り、ママに似てきた」と耳打ちした。
大広間にはテーブルいっぱいに食事が沢山並んでおり、目の前に座るロンが、まるで頬袋でもあるんじゃないかと思うくらいマッシュポテトを口に頬張っている。
それを眺めながら、クリスはいつも通り紅茶だけで済ませようと、ティーカップに砂糖とミルクたっぷりの熱い紅茶を口に含んだ瞬間、突然ハーマイオニーが「あっ!!」と声を上げたので思わず吹き出しそうになった。
「げほっ、げほっ……ど、どうした?」
「見てよこれ!!」