第15章 【BAD NEWS】
自慢の白い手に醜い傷跡は残ったが、アンブリッジの罰則は一応終わった。だが例の悪夢は、終わる気配さえ見せなかった。
毎晩夜中になるとうなされて目を覚ましてしまい、仕方なく朝まで時間をつぶす為に宿題をやる。
しかし宿題だって無限にあるわけじゃない。3日間で1週間分の宿題を終えると、クリスは図書館で借りてきた本を読んで時間を潰すようになった。
有難いことに、図書館には数えきれないほどの本がある。この際ジャンルを問わず、クリスは暇つぶしの為だけに色々な本を借りてきては読みふけっていた。
その日も徹夜明けで大広間に行き、紅茶を嗜んでいるとハリー達が少し遅れてやって来た。
最初のうちはクリスが早起きしていることに驚いていた3人だったが、ここ最近では驚く気配すらない。むしろ、クリスの目の下に出来たクマをみて、心配そうに声をかけた。
「クリス、また徹夜?いい加減ちゃんと寝ないと体に悪いぜ?」
「大丈夫だ、授業中に寝るから。今日は『占い学』と、あと『魔法史』があったな。悪いが後で宿題の範囲だけ教えてくれ」
授業中に居眠りをするなど、優等生の鏡であるハーマイオニーはあからさまに嫌そうな顔をしたが、小言を言う前に『日刊預言者新聞』を運んできたコノハズクに遮られ機会を失った。
ハーマイオニーはコノハズクの足に括り付けられた皮袋に1クヌート入れると、ものすごい速さで新聞に目を通した。
「ああ、ダメ。やっぱりろくな記事がないわ。あ――いや、ウソ、だめよ、これは絶対危険だわ」
「どうしたの?」
「シリ――スナッフルについて書いてあるわ。『魔法省が有力な情報筋から得た証言によると、大量殺人鬼のシリウス・ブラックは現在ロンドンに隠れ住んでいると思われ……』だから屋敷から出たら駄目だったのよ。ダンブルドアの仰る通りだわ」
「ちょっと見せて!」
ハーマイオニーが手にしていた新聞を、ハリーはひったくるように奪った。クリスも横から覗き見ると、そこには確かにシリウスについての記事が載っていた。
コンパートメントで、ドラコが“犬”と言っていた事も踏まえ、ワームテールと同じ『死喰い人』であるルシウス・マルフォイから情報を得たのは明らかだ。