第14章 【それぞれの思い】
「つまり――彼方はアンブリッジがクィレルみたいに『例のあの人』に操られているって言いたいの?」
「その可能性がなくはないだろ?」
「よく考えてちょうだい、クィレルの様にとはいかないはずよ。だって今『例のあの人』は『肉体』を得ているんだもの。誰かに憑りつくことは出来ないわ」
「じゃあ『服従の呪い』かも」
「その線は薄いな。一応相手は魔法大臣直属の部下だ。バーサ・ジョーキンズと違って、それなりの自衛手段は取っているだろうし。それよりも、去年だって傷が痛んだことがあっただろう?それについてはどうなんだ?」
確かヴォルデモートが誰かを殺す算段をしている時、ハリーの傷が痛んだのだ。それを踏まえると、誰か犠牲者が出る前に、騎士団のメンバーに知らせた方が良いと思える。
ハリーは初め、シリウスに手紙を送ろうと言ったが、ハーマイオニーが「手紙は奪われる可能性があるからやめた方がいい」と言ったので、明日ダンブルドアかマクゴナガルに相談しようという事でその場は解散になった。
ハーマイオニーと一緒に女子寮へ戻ると、クリスは熱いシャワーを浴びた。お湯が傷口にかかるたびズキズキと痛んだが、そのおかげでアンブリッジへの憎しみがまし、いつか復讐してやると言う気持ちが強く芽生えた。
それから、ベッドの中で日課である魔法のトレーニングを行った。しかし、相変わらず何の変化もない。
もしこのまま魔力が戻らなかったらどうなるんだろう。留年は当たり前として、最悪の場合、退学も考えられる。そうしたら、自分はどこに行けばいいのだろう。
サンクチュアリの屋敷か、シリウスの実家か、はたまたスクイブとしての烙印を押されマグルと交じって暮らすのか。それとも――……その考えが頭をよぎった瞬間、クリスは胃がねじれるような思いと同時に吐き気がした。
「だれが……あんな奴の下になんてつくもんか……」
クリスの喉の奥から絞る出すような呟きは、夜のしじまに溶けて消えていった。