第13章 【PMCS】
「焦っても良い結果は得られぬ。まずはゆっくり心と体を休めることじゃ。1年と言うのは君が思っているよりも長い。これも何かの縁、これを機に自分の心と対話してみるのも手じゃ」
心と対話、と聞いてクリスは胃が締め付けられるような気分がした。
クリスの心に巣食う、ヴォルデモートの影。そんなものと対話して何になるのだ。むしろそいつに意識を向けるだけで生気が失われていくというのに。
しかしダンブルドアに、ひとりで寝ていていたら悪夢に脅かされているとは言いたくなかった。それではまるで、お化けを怖がる子供と同じ様に思えたからだ。
クリスはあえて何も言わず、今後の方針をダンブルドアと、寮監であるマクゴナガル先生との3人で話し合い、月に1度治療のため聖マンゴ病院に通うという事でその場は解散になった。
談話室の戻ると、待ち構えていたようにハリーとロンとハーマイオニーがクリスを取り囲んだ。アンブリッジの授業を飛び出してから、そのまま1時間以上も戻らなかったのだから心配して当然だ。
不安な顔をする3人を前に、クリスは何て説明すれば良いのか分からなかった。しかし、この3人に隠していても仕方がない。クリスは努めて感情を込めずに言葉を発した。
「魔法が使えなくなった」
「……え?」
「魔法が使えなくなったんだ。癒者曰く、精神的なものらしい」
「そんなっ!!」
ハーマイオニーが驚きのあまり、目を大きくして両手で口を押えた。痛い沈黙が4人の間を取り囲む。
何故だろう、こう素直に驚いてくれると、逆にクリス自身は冷静になれてしまう。クリスは病院で言われた事、校長室でダンブルドアに言われたことを包み隠さずありのままを伝えた。
「……でも、治るのよね?その……治療を続けていれば」
「癒者が言うにはな。治らなければ留年するだけだ」
「留年って……君はそれで良いのかよ!?」
「良いも悪いも、なってしまったものは仕方ない」
そうだ、誰もなりたくてなったワケじゃない。そのニュアンスが伝わったのか、3人はそれ以上つっ込んでこなかった。