第13章 【PMCS】
「――恐らく、心因性魔術回路収縮症候群……Psychogenic Magical Contracttion Syndrome。通称PMCSと呼ばれるものです」
ここはホグワーツから遠く離れた聖マンゴ病院。魔法使い専門のヒーラーと呼ばれる『癒者』が勤める大病院だ。何かしらの怪我や病気にかかった魔法使い達は、殆んどがここを訪れる。クリスもその例外ではなかった。
突然魔法が使えなくなった――。真っ青な顔をしながらマクゴナガル先生の部屋に訪れそう伝えると、先生は早速この病院にクリスを連れて行った。そして体中をくまなく調べられ、出た結論が先ほど癒者が告げた言葉だった。
「……PMCS?」
聞いたこともない言葉に、思わずクリスが訊き返した。
「ええ、恐らく極度のショックを引き金に、全身に張り巡らされら魔術回路に魔力が行き届かなくなったと考えられます。魔法使いの体は魔術心炉と呼ばれる器官から、魔術回路と呼ばれる全身に張り巡らされた管に魔力を送ることで魔法を発動させます。この魔術回路が発達している魔法使いであればあるほど、強力な魔法を使う事が出来るのです」
そうか、何故ハーマイオニーやネビルの様に魔法が得意な人と不得意な人がいるのか、これで納得がいった。
そんな風に、クリスは癒者が言う言葉をまるで他人事のように聞いていた。と、言うより魔法が使えなくなる日が来るとは、夢にも思っていなかったから当然と言えば当然なのだ。
生まれた時から当たり前の様に魔法界で暮らし、魔法によって生活が成り立っていた。そんなクリスにとってどう受け入れろと言うのだ。今の現状こそ受け入れがたい事実であり、正に非現実の夢の出来事だった。
「それで、その病気は治るのですか?」
付き添いで来てくれたマクゴナガル先生が、クリスの肩に手を置きながら言った。癒者は一瞬デスクに視線を落としたが、クリスとマクゴナガル先生に向き直ると優しい笑顔を見せた。