第12章 【LOST】
授業開始の鐘がなるギリギリに北塔にたどり着くと、ハリーとクリスは急いで梯子を上った。
『占い学』の教室の中は相変わらず薄暗く、むわっとする熱気に包まれ、思わず鼻を覆いたくなるような香の匂いがした。
こんなところでまた1年間授業を受ける羽目になると思うと、それだけでうんざりする。
ハリーとクリスが手近な椅子に座ると、暗闇の奥からぬ~っとトレローニー先生が現れた。
細い体に薄いショールを何重にも巻きつけ、首や腕にキラキラと輝く装飾品を着けて、顔には寸法の合っていない大きな便底丸眼鏡をかけている。
こんな変人世界中を探したって3人といないだろう。
おまけに先生は頭の中も常識外れで、やれ『心眼』がどうだの『お告げ』がどうだのと言って、今年5年生を対象に行われる『O・W・L』の試験に『占い学』の真の価値は見出すことは出来ないと言った。
ただ学校で行われるから仕方なく行うだけで、試験の結果を鵜呑みにすると芽生え始めている『前世からの記憶』に亀裂が生じるなどチンプンカンプンな事を言っていた。
……要するに、自分の教えが魔法省の教えに沿っていないから言い訳をしているだけの話しだ。
「机の上に、イニゴ・イマゴの『夢のお告げ』が置いてありますね。夢の解釈は各々の未来を視るのに最適な方法ですし、『O・W・L』試験にももちろん出ます。では皆さん序章を呼んだ後、二人一組でご自身の夢を解釈なさって下さい」
クリスとハリーは黙って『夢のお告げ』の序章を呼んだ。が、内容はあまり頭に入って来なかった。3年生の時に思ったが、やはりあの時ハーマイオニーと一緒に『占い学』を辞めなかったのは人生最大の失敗だ。
残りの時間、お互いの夢について解釈し合えと言われたが、解釈なんて必要なかった。
「クリス、最近の夢って覚えてる?」
「あれ以来悪夢ばかりだ。ハリーは?」
「同じ。僕もあれ以来うなされ続けてる」
それだけで、『夢のお告げ』なんて読まなくてもお互いの事が手に取るように分かった。
結局、残りの時間ハリーとクリスは、この後の『闇の魔術に対する防衛術』がどんな授業なのか推測しあった。