第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~
刹那の言葉に伊黒がぴくりと反応した。
それは忌まわしい傷の事を言われたからよりも、布を巻いている状態でなぜ気付けたのかという疑問からだ。
「何故わかる、隙間でも空いていたか」
『筋肉が少し萎縮しているようでしたので、以前お会いした時からそうでしたがそれは古い傷なのでしょうか?』
伊黒は驚いた。
刹那と会ったのは今日でたった2回。
その2回の間に刹那は卓越した観察力で、布の下の傷を言い当てていたのだから無理もない。
(気持ち悪い女だ....)
そう思いつつずかずかと自分の触れて欲しくない部分に触れられている現状で、不快に感じていない自分自身にも腹が立った。
信用した訳では無い。
只真っ直ぐ見つめてくる敵意の無い目が、少しずつ自分の中の疑心を溶かしている事に気づく。
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「煉獄、お前はもうあの女を疑っていないのか?」
「そうだな!今は全くだ!!」
「はあ、それほど長く一緒にいた訳じゃないだろ。どういう風の吹き回しだ?」
「うむ!俺もよく分からん!だが彼女と居ると、何か信用せざるを得なくなる様なそんな感覚になる!」
「何だそれは。そんな事をいわれても俺は信じないぞ。」
「ははは!だろうな!」
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(煉獄が言っていた信用せざるを得なくなる不思議な感覚とはこれの事か...)
二手に分かれる前煉獄に言われた事を思い出しながら、伊黒は刹那に視線を合わせる。
逸らされずこちらだけを見つめるその目には好奇心。
きっと布の下を見たいのだろう。
気付いているなら調弄す意味も無いと、伊黒は半ば諦めたように口元の布を解き始める。
「ほら、見たかったのだろう。これで満足か?」
解かれた布の下から現れた傷に刹那の瞳が揺れる。